実話 怖イ話 短編

病院のエレベーターが勝手に昇降する

2.5
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午後5時。夜勤が始まる。
ナースステーションの中では看護師たちが慌ただしく行き交う。
そんな中、ポツンと一人の白髪の老女が車椅子に座り、白い服を着た看護師たちをボーッと見つめている。
「佐久間さん、今晩わ」
中腰になり老女に声をかける。
老女はふっと一瞬こちらの目を見る。が、すぐに目をそらし、目の前にあった色鉛筆を手に取ると塗り絵に色を塗り始めた。こうなるとどんなに話しかけても反応しない。
苦笑いしながら老女に背をむけ業務を開始した。

夜10時。
老女が車椅子に座ったまま船を漕ぎ始めていた。
「佐久間さん、お部屋、戻ろうか」
車椅子をゆっくりとおす。少し進むとタイヤがパソコンの配線に乗り上げ、小さく揺れる。その振動で老女が目を覚まし、数秒とろんとした目で周りを見渡す。そして、ある一点でふっと視線を止めた。視線の先にはナースステーションの開け放たれたドアと2機のエレベーター。老女の視線は動かない。
「佐久間さん?何見てるの?」
答えはない。
老女の視線の先を追うが、特に何も見当たらない。
・・・と、エレベーターの1機が動き出した。
1階・・2階・・3階
ポン、と音がしてエレベーターが止まる。
音もなくドアが開く。が、誰も降りてくる気配はない。
しばらくするとエレベーターのドアがひとりでに閉じ、1階へと下降して行った。
誰か間違って押したのかしら。

ふと視線を戻すと、老女は興味を失ったかのように視線を下に落とし、再びうつらうつらとし始めた。
老女をベッドに移しナースステーションに戻ると、先輩看護師の桜木が戻ってきていた。


今日は静かだ。ナースコールがほとんど鳴らない。不気味なほどに。
手持ち無沙汰になり、ふと先ほどの出来事を話す。
桜木が微妙な顔をしながら口を開いた。

「あのエレベーターさぁ・・いるらしいよ」
「・・・え?」
いつの間にか戻ったのか、もう一人の看護師、井上が口を挟む。
「それ聞いたことあるー。男の子とおじいちゃんの幽霊がいるんでしょ、あのエレベーター」
「そう。夜になると、男の子がふざけてエレベーターのボタンを押すんだって。だから誰も乗ってないのにエレベーターが行ったり来たりすることがあるの」
「嘘、ですよね・・・?」
思わず顔が引きつる。それを見て桜木はにやっと笑った。

投稿者:病院勤務

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