怖イ話 短編

金縛りの夜

2.5
(2)

 イヤホンで音楽を流しながら、最寄り駅から夜道を歩く。秋の夜風が頬を撫でるのが気持ちよくて、どこまででも歩けそうな気がする。久々に集まったメンバーでの女子会は盛り上がって、いつもはお酒を飲まない私も少し飲みすぎてしまったかもしれない。

 アパートに着いた私は、ちょっとだけふらつきながら、階段を上がっていく。私の部屋は2階だから、いつも楽。すぐに部屋の前に着いた。ちょっとしたブランド物のショルダーバッグから、家の鍵を取り出して扉を開ける。狭い玄関で濃いピンクのパンプスを脱いだ。音楽を止めてイヤホンは外して、手だけは洗った。でも、眠くて仕方なくて、他のことは何もできない。私は、白いレースのワンピースのままベッドに倒れ込んだ。

 私が眠ってからどれくらいが経ったのかわからないけど、苦しくて目が覚めた。

 私のお腹の上に、何か重たいものが乗っている感覚がする。私は思わず、それに目をやった。見えてしまったそれに、私は言葉を失う。どす黒い、もやのようなものに包まれた何かがある。よく見ると真っ黒な、だるまを逆さまにしたようなものが、お腹の上でゴロリゴロリと音を立てながら揺れている。見てはいけないものだ!私は直感的にそう思った。30センチくらいはありそうなそれは、縦に揺れながら、ゆっくりと横向きに回転している。それが正面を向いたら、私は一体どうなってしまうのだろう。

ゴロリゴロリ。

 気持ちの悪い音を立てて、それが動く。体の自由はまったく効かない。今すぐ立ち上がって逃げたいのに、両手両足はピタリとベッドにくっついていて、少しも動かすことができない。

ゴロリゴロリ。

 それは動くのを止めない。お願いだから止まって、止まってよ!私は思い切り念じる。

ゴロリゴロリ。

 それでも、その物体は動き続ける。これは夢。夢だ。私はきつく目を閉じようとした。ダメ、閉じられない。自分で自分の体がコントロールできない。冷や汗が流れ続ける。これは夢だから。夢!夢!夢、夢、夢!私は頭の中でそう叫び続ける。

ゴロリゴロリ。

 ついに、それがこちらを向いた。

 それは、血の気のない私の生首そのものだった。

 悲鳴すら上げられずに飛び起きる。私は寝汗がぐっしょりで、ハァハァと肩で息をしていた。

 なぜか、誰かに見られている気がする。恐る恐る、視線がするほう、上を見上げる。

 ベッドの上の私をまたぐようにして、ハンマーを持った男が仁王立ちしていた。

 これも夢、夢だよね?だって私、こんな人知らない。見たことない。

 寝起きの頭で、どうにかしてこの状況から逃げる方法はないか、必死で考える。でも、結論はひとつしかない。どうしようにも、この男の力とハンマーに、私は負けてしまうだろう。何度考えても逃げられない。冷や汗がダラダラとシーツに流れ落ちていく。追い詰められた私は、考えるのをやめた。

 見知らぬ男は黙ってニチャリと笑う。そして、私の名前を呼んだ。

投稿者:田貫有為Twitter/ブログ)

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