実話 怖イ話 短編

”見える人”が体験した某テーマパークの怖い話

4.7
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『にぎやかなところ、水のあるところには、霊が集まるよ』

 これは、当時私がお世話になった上司の一言だ。

 私がそのテーマパークで働き始めたのは、二十年ほど前、ちょうど二十歳になった時。東京都内、閑静な住宅街にある全天候型のテーマパークで、アトラクションを担当していた。

当時テーマパークには七つのアトラクションが存在し、私はアルバイトながらも、その中の三つのアトラクションを担当。アルバイトの中ではリーダーというポジションだったため、月に二十日以上勤務をしていた。

 もともと霊感体質でも、霊感のある家系でもなかったのだが、中学生の時交通事故に遭って以来、私はいわゆる“見える人”になってしまった。

 そんな体質になってから数年経過していたので、もう霊に遭遇して驚くということもなく、「またか……」という想いと、決して目を合わせないことだけを心に決めて生活していた。目を合わせると、憑いてきてしまうからだ。

 しかし、人の多いにぎやかなところというのは、時に判断がつきにくい。霊の方も案外普通に生活し、普通に遊びに来てしまう者も多いのだ。そんなこともたびたびあった。担当する三つのうち、アトラクション内で二つが水の流れる場所。私が出会ったのは、やはり上司の言う通り、その二つのアトラクションでだった。

 一つはボートに乗って、キャラクターの世界を見るアトラクション。オープニング作業を行うスタッフは、必ず一度実際にボートへ乗り込み、機器の点検をする。クロージング作業を行うスタッフは、それに加えてお客様が残っていないか、お客様の落し物が水路に無いか、を点検する。最後に記念写真を撮るのだが、その写真が正常に写るか迄を確認するのが一連の流れだったが、霊感体質の私には弊害が多かった。

 いつものように点検表を持ってボートに乗り込み、一緒に作業をしている仲間に、ボート出発のボタンを押してもらう。それから、アトラクション内部を見ながら点検表に書き込むのだが。

「スモーク、いつもより多かったけど、何か聞いてる?」

「いいえ、聞いてません」

 部屋全体が白い煙に覆われる、幻想的なエリアがあるのだが、私にはそのもやが人よりも多く見える日があった。何度か経験して、霊の仕業かと気付き、それ以来確認するのをやめた。

 またある日は点検に行かず、点検スタッフを監視カメラのモニターで確認し、モニター越しでも異常が無いかをチェックをしていた。

「四つ目の部屋を通るとき、部屋の中の照明真っ暗になってなかった?」

「そんなことないですよ。むしろその部屋の照明は昨日切れかけてたので、テクニカルの人に変えてもらったばかりじゃないですか。もう、あきらさんやめてくださいよー」

「ちなみに、途中から誰かボートの一番後ろの列に乗ってきたなんてこともないよね?」

「当り前じゃないですか! え、ちょっと、またいたんですか?」

 モニターでは通常、四つ目の部屋は多少薄暗い程度なのだが、その日は真っ暗で次のエリアにボートが差し掛かるまで何も見えなかった。そして、次の五つ目のエリアで見えるようになった時に、ボートの最後列にはアトラクションの制服ではない姿の女性が乗っていた。

 私は霊が見える体質のせいで、ことごとく仕事に支障をきたした。しかし、それも慣れてしまえば問題はない。最後の写真撮影に、子供のような影が写りこむのだって、今日も来たんだねと、常連のお客様のように思っていた。

 そんなこんなで、怖い思いをすることなんてこのパーク内では早々ないだろうと高を括っていた私が、最後に唯一怖いと震えあがったお話をしてこの話を終えようと思う。
 ベテランになると、キャラクターと接する機会もあるのだが、それはとある“キャラクター”から聞いた話。一つだけ言っておくが、テーマパークは夢の国だから、中の人なんていない。

「あきらさん、見える人なんだって?」

「そうですよー。まぁ、見えるってだけで、目を合わせたりしないから、向こうに気付かれてはいないと思いますけどね」

「いや、最近パレードの時間が怖いんだ……」

 そのパークでは大体一日に二回ほど、パーク全体をフロートと呼ばれる車にキャラクターが乗り込んで回るパレードがある。その当時の演目は、そのキャラクターは三十分ほどあるパレードの中盤まで、フロートの中に隠れていて、演出上名前を呼ばれてから登場する。その、潜んでいる時間が苦痛だというのだ。

「どうしたんですか?」

「僕がフロートに乗り込んでいるだろう? そうすると、フロートの扉を閉められた瞬間から、出ていく時までずっと、ものすごい力で背中をたたかれるんだよ。それから、十五分間、言われ続けるんだ。

『ねぇ、遊ぼう! 遊ぼうよ! ねぇ、遊んでよ!!』って」

 もちろん、そのフロートには人が入り込む隙間なんて無ければ、子供が入り込める余地も無い。それに私は知っている。霊に話しかけられた時は、必ず憑いてくるのだ。

 これは、今も存在するテーマパークでのお話である。

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