不思議な話 実話 短編

”見える人”が知った霊の正体

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 私が霊を見るようになったのは、中学生の時交通事故に遭ってから。
 初めに見えるのがわかったのは、病院のベッドでだった。左大腿骨を折って入院した為、中に芯棒を入れてボルトで止める手術を受けるまで勿論歩くことなど出来ない。だから、トイレは行けないし、窓やカーテンの開閉も全て看護師に頼まねばならなかった。
 救急搬送された病院では手術が行えないため、少し大きな病院に転院することになったのだが、病院は運悪くベッド数がギリギリだった。私は転院する際救急車に乗せられたが、ストレッチャーのまましばらく待たされた。それから二人部屋のベッドに移されたのだが、その夜奇妙なことが起こった。
 夜中に何となく気配がして目を覚ました。窓が開いているのかカーテンが揺らめき、面会者が座る用の椅子に、見知らぬおじいさんが座っていたのだ。面識がないので、自分のベッドを間違えてしまったのかと、慌ててナースコールを押した。

「すいません、おじいさんが隣にいるんですけど」

 ばたばたと走ってきた新人ナースが到着した時には、いつの間にかおじいさんはいなくなっていた。

「おじいさんて、どんな?」

 私は聞かれるままに、おじいさんの特徴を話した。すると、新人ナースは一気に青ざめた。

「あきらちゃん、ベッド、替えよう!」

 後日母に聞かされた話によると、本来ならその日亡くなった方が出たベッドは一日開けて他の患者さんに使わせるのだが、ベッドに空きがないので、仕方なく私がそのベッドを使うことになったそうだ。亡くなったおじいちゃんの風貌を母は覚えていて、私がこんなことがあったと伝えると、同じく母も口に手を当てて驚いていた。

 霊が見える体質になってしまった、そう自覚したものの、なかなかその霊の正体を知ることは無かった。しかし、見えるようになってから25年以上経ったなかで一度だけ、正体がわかった霊がいる。

 それは、私が喫茶店でアルバイトをしていた時の話だ。
 その喫茶店は古くからあり、私が働き始めた頃でも既に30年以上経っていた。そのため、常連客も多く、カウンターで常連客と話をすることもしばしば。
喫茶店の地下にはバーがあり、同族で経営しているため、バーが忙しい時はそのまま夜バーを手伝うこともある。地下にはバーとは似つかわしくないのだが、どういうわけか座敷童のような子供をたまたま見かけることがあり、「今日もいたよ」なんて話を他の従業員に話したりしていた。
私が見える体質だという噂を聞きつけた常連客の一人が、昼の喫茶店で質問してきた。

「あきらちゃん、この辺に心霊スポットってある?」

 何の気ない質問に聞こえた。なので、私も一番近くで遭遇した霊の話をした。

「そうですね。ここから駅の方へまっすぐ行くと、巨大マンションの下に二車線ずつのトンネルがあるじゃないですか。そこで見たことがありますね」

 少し驚いたように目を大きくした常連客は、どんな霊だったのかを頻りに聞いてきた。

「元々嫌な感じがするから、特にこっちから見て左車線側の歩道は通らないようにしてたんですけど、この間急いでたんで通ったんですよ。そしたら。左車線なのに、こちらに向かって赤いバイクを押しながら歩いてくる学ラン姿の青年がいて、足を引き摺ってヘルメットも割れていたから、事故だ! と思って通報しようとしたんです。でも、よくよく雰囲気を見たら、ああ、違うなって思って」

「学ラン!? 赤いバイク!? やっぱり、やっぱりそうだ! “あきら”君よ!」

 そのトンネル内で事故に遭い、亡くなってしまったご友人の息子さんと同じ風貌だと判明した。二輪免許取り立てで、買ってもらったばかりの赤いバイクで事故に遭い、打ち所が悪く、二日後に不調を訴えて横になったまま、帰らぬ人になったそうだ。

「じゃあ、まだあそこを彷徨ってますね。多分なんですけど……、お花、枯れたままなの、そうですよね?」

 長らくトンネルに備えられた花が、枯れているのが気になっていた私は、そのせいでとどまっている可能性があることを伝えた。他の事故現場にも多いのだが、自己満足で手向けるだけ手向けて、枯れたままにしたお花に寄り添うように、霊が佇んでいるのをよく見るのだ。その花のせいで成仏がしにくいのかもしれない。あくまで自分の想像だが、そう伝えると、「わかったわ」と、常連客は快諾してくれた。

 後日、綺麗な花が手向けられており、私はそこで手を合わせた。その先のトンネルで、“あきら”君の姿を見ることは無かった。
 偶然だと思ったかもしれないが、私はそれ以来、こうした話を綴るときは、本名ではなく彼の名前である“あきら”を名乗ることにしている。
やりたいことが沢山あっただろう。
取ったばかりの免許で行きたいところも沢山あっただろう。
悔しかったに違いない。
そんな、若くして亡くしてしまった命を、忘れないために。

投稿者:匿名

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