実話 怖イ話 短編

探す女

4.5
(4)

それは、10年前の春の事でした。

当時付き合っていた彼氏とバイクを2人乗りして、日帰りで某島へ遊びに行きました。
フェリーにバイクごと乗って島へ行き、お花畑や海辺を散策していたら、時間の計算を間違っていたのか、最終のフェリーの時間に間に合わなくなってしまったんです。

私たちは旅館を探そうと、コンビニで旅行雑誌を買いました。
手当りしだい電話をかけると、1件の老舗旅館に空きがあり、夕食も用意していただけるとのこと。

その旅館は現在地から反対側に位置するので、島の真ん中を横切って行こうという話になりました。
しばらく走っていると、島の中心に向かって伸びている道を見つけました。


「ここ通れそうだね。」

そう言って緩やかな坂を登って行くと、途中で二手に別れた道に出ました。
右側は獣道。左側は舗装された綺麗な道。
当然、左側に進もうとしたんですが、何か違和感があるんです。

透明のバリアが貼られているようで、バリアの向こうには違う世界が広がっているような変な感覚。
そう感じた瞬間、「ここに居てはいけない!」と身体の中で警報が鳴ったようでした。

彼も同じように感じたのか。
「引き返すぞ。振り向くなよ。」
とだけ言って、一目散に坂を下りました。
終始無言のまま海沿いの道を進んで旅館に着きました。

その旅館でも違和感がありました。
何組かの団体客が宿泊してるはずなのに、誰とも会わないんです。

廊下にも大浴場にも誰も居ない。廊下も薄暗い。音も無い。なのにずっと誰かに見られている感じ。

温泉をゆっくり楽しめる気分でもないので早々に切り上げ、薄暗い廊下を小走りに部屋に戻りました。

夕食の時間は、さっきの嫌な事も忘れるぐらいにリラックスしてお酒も進みました。
ふかふかのお布団に包まるとホッとしたのか、私たちはすぐ眠りにつきました。


しばらくして突然目が覚めました。時間を見ると夜中の2時。眠気を全く感じない、あんな目の覚め方は初めてでした。
そして突然、隣で寝ているはずの彼が、

「うあー、うううあーーー。」

と目をひん剥いてギョロギョロさせながら唸っています。

金縛りに合っていると気付いた私は、彼の身体を何度も揺さぶりました。
何度目かで解けたのか、急に静かになったかと思うと彼は目を閉じました。
同時に私も意識が無くなりました。

朝を迎えて島を出てから、昨夜の事を彼と話しました。
彼が言うには、白い服を着た髪の長い女がゆっくり部屋に入って来たかと思ったら馬乗りになり、顔を近づけてきて目をひん剥いて、

「どーこーだー、どーーこーーだーー。」

と、誰かを探すように繰り返し叫んでいたそうです。

彼は、

「俺じゃない。お前が探しているのは俺じゃないから、出ていってくれ!」

と心の中で叫んでいたら、スーッと消えたと言っていました。

その女は、昼間の山道からついて来ていたのが、彼には見えていたそうです。
もしかしたら私達のバイクに一緒に乗っていたのかも知れません。

女は誰を探していたのでしょうか。
私達が入った山道は存在したのでしょうか。

投稿者:あかつき

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